月舘町伝承民話集 -126/200page
つ ぶ と き つ ね
昔ある大きな他に何十年と住んでいる知恵のあるでっかい「つぶ」がおりました。狐はいつも、なんとかしてあのつぶを取って食ってやりたいものだと考えていました。だが知恵があり、用心深いつぶを、どうしても取ることができませんでした。
ある日、狐がぶらりと池のところにやってきて、
狐「やあつぶさん、今日はいい天気だない」
つぶ「やあ狐どんか、ほんとにいい天気だない」
狐「こだにいい天気に、たあだぶらぶらしてでもおもしろくもねいし、何かおもせいことでもしてあすんべいと思って、きたんだよ」
つぶ「ほうがい、おれも今とろとろといねむりしていたところだが、そのおもせい遊びって何だい−」
狐「それはな、おれとおめえと二人で向こうの山のてっちょねまではねくらして、そして敗けた方が勝ったものに食われても、ぜいっていうことにしっぺい。おれが敗けたら、つぶどんに食われる、おめえが敗けたらおれがおめえを食うことにして、はねくらしっぺいでねいか」
つぶは考えた「これは、このずる狐がおれをづうと前からねらっていても、食えねえんでこんなことをいっ てきたな。よしそんなら狐のいう、そのはねくらおもせいがんべいが、その太いしっぽが川を渡るとき、水 につかってぬれたら何ぼかハネづらがんべえが」と……。