月舘町伝承民話集 -137/200page

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白蛇大神のこと

 その昔、女神山ろくに数人の作男と下婢を使い、大きな屋敷を構えた豪農があった。

 ある夏の夜のことである。主人長兵エも使用人達も既に寝静った丑三つどき、長兵エは素足に何かヒヤリ とさわったものがあるのに目を覚ましガバッとはね起きた。片方の足がひどく重い。家の子郎党を呼び起し、 灯りをともした。長兵エも郎党もアッと腰を抜かさんばかりに驚いてしまった。

 なんと体の真白な太い蛇が幾重にも足にからみ鎌首をもたげて長兵エをにらみつけている。長兵エはこれ は大へんなことになったとなんども足を振って振り落そうと焦ったが、蛇は離れるどころかますます巻いた 力を強めるばかりである。業を煮やした長兵エは、そのまま土間に掛けてあった磨ぎすました鎌をもって外 に出た。それでも蛇は離れようとしない。長兵エやにわに鎌をもって、蛇を下からザクッと切り上げた。バ ラバラッと切れた蛇が落ちていった。

 長兵エは薄気味悪い、眠れぬままに朝を迎えた。そして夕べ切り落した白い蛇を見るため外に出た。途端に 長兵工驚きの大声を上げてしまったのである。それもその筈、昨日はそれ程大きな大蛇とも思わなかったが、 なんとそれがタンガラで七ッ半はあろう大蛇になっていて小山をなしていたのである。

 長兵エは、後の崇りを恐れ一族をあげて手厚く葬り三尺四方の土盛りをしこれを「蛇塚」とした。しかし その後も自蛇の怨霊が出て悩まされ災が絶えなかったのでこれを「蛇類明神」とし、長兵エー家の氏神であ あった稲荷様と合せて祀った。その後もなんとしても明神満足がしなかったので、更に 「白蛇大神」と改め


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