月舘町伝承民話集 -136/200page
元暦の古碑と名刀工
糠田の入山という部落に「元暦年間」の古碑がある。この古碑は、県内でも数少ないものだという。しか し惜しむらくは風化激しく碑の文字が明確に読みとることができない。
ただ「小手濫觴記」によれば「元暦元年(西暦1184年頃)3月」と大きな文字のみが読みとれたと いうことであった。
この古碑との関係については明かでないが、このようなことが語り伝えられている。
その昔、刀鍛冶がおり、この刀鍛治の打つ太刀がまことに素晴しいものであった。この当時刀を打っては 右に出ずる者がないといわれた名工近江国の関氏(関の孫六を打った名工か。)をも、凌駕する程の業物を鍛 ち出したという。
ある日遠くこの噂を聞いた関氏がはるばるこの地に足を入れたのである。そしてこの鍛治の鍛えた業物を 見た。その反りといい色つやといい紋様切味のよさ、一点非のうちどころのない正に名刀であり名工で、到 底拙者の及ぶところでないと賞讃をおくったのである。
そこで関氏は「拙者(関・堰)を破れば即ち大水となる」といい、この名刀工を「大水」と名付けたという ことである。
この古碑は、名刀工「大水」の屋敷跡に建てられてあり、現在も跡地から時折金屑葉が発見されるという。 しかしこの古碑と名工とのいわれについては、今もって知る由がない。