月舘町伝承民話集 -162/200page
た。ここで借りた金を、利息をつけて返すという約束をしておいた言葉を信じて家を出たのです。余り暑く ならないうちに友だちにあって話をきめようと思い途中いそいで山道を通って、六杯内に着きました。約束 の時がやって来たのに友だちの姿は見えません。嘉作は友だちが何か用が出来て少し遅れたのかなあと、そ の辺の草むらに腰をおろして待っていました。何時間たっても、友だちはやって来ませんでした。嘉作は、 待ちくたびれて友だちの家に行こうかと考えましたが、友だちは嘉作からお金を借りる時、家人には内密に 借りるのだから、だれにも話さないでくれといわれたのを思い出して、しんぼう強くもう少し待って見よう と思って、草むらに寝ころんで空を見上げていました。カラスが気味悪く嘉作の方に向ってやかましく鳴き さわいでいるのです。
遠くの方で何だかさわがしくなって来たようでした。一匹の犬が、急に嘉作にとびついて来ました。その 時友だちはほかに知らない若い男をつれて鉄砲をかついでやって来たのです。そして、杉木立の下に立ち上 って嘉作は友だちらの姿をにらみつけるように見つめていました。友だちは肩から鉄砲をおろして、弾丸を こめて嘉作の方に向けていたのです。「嘉作よ!!この鉄砲の弾丸を取ってみろ!!うまく取れたら、金は倍にし て返してやるよ……」とあざけるようにどなっている。犬は大きくほえかかって、嘉作のまわりを暴れ回っ ている。嘉作は友だちに馬鹿にされたことに初めて気付きました。そしてくちびるをかみしめて弾丸を握る 姿勢をとりました。
「ズドン!!」大きな音を立てて友だちの鉄砲から火の噴くのが見えました。「ピシャリ……」音を流しながら 嘉作の手に銃弾が一発握りしめられました。ところが間一髪またまた 「ズドーン!!」という音と共に一発の