月舘町伝承民話集 -164/200page

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勇婦を祀る荒人神社

 馬城内の丘の上にあった芳作舘主高橋丹波守敗死後、一族殆んど四散した中にその後裔といわれた翁媼の カップルが住んでおりました。ある日のこと、翁は狩猟のため外出し、媼は昼飯の用意をしておりました。 その時です。一匹の大熊が口をあいてはいってきたのは。媼は切り板を熊に投げすて熊がひるむところを、 用心の錆び槍で一突に刺し殺しました。

 ふたりは、大熊が後々崇ることをおそれ、近所の丘陵に葬り、椚の木を印にうえたうえ、熊野大明神とい う神さまとして祀りました。この武勇伝が遠近に伝わり、いつも人びとの話題にのぼりました。

 そのうちにこの媼も天寿を全うして世をおわりました。遺体は熊野明神とあまり離れないところに葬りま した。ところがある時里びとらは、この媼の夢じらせをうけました。「われを荒人として神に祀れ。さすれ ば産婦のことを見守るべし。」 というのでございました。人びとは、その通りにいたしました。

 今でも時折、参詣する産婦をみうけることがございます。


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