月舘町伝承民話集 -165/200page

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天狗に襲われたある氏子の話

 上手渡地区に、古社小志貴神社(文永6年3月、 文正15年4月15日、寛永6年清明24日、貞享 元年3月19日の棟札現存) が鎮座している。口伝に ある通り山陰中納言が、西山の不動ヵ滝において老猿 に襲われ危いところを白鹿にたすけられたことは、こ れ偏に神徳の到すところと里人らは信じてきた。明治 初年のころ、篤信の氏子斎藤治郎兵衛と高橋直五郎の 両名は、吾妻連峰の小志貴社奥の院に詣うでようと思 い立ち出発した。目的地がもう少しという山中で、不 幸斎藤治郎兵衛は崖道を踏みはずしあっというまに山 腹の急斜地をころげ出し、途中の木の根に引っかかっ た。直五郎が駈けよったときには、もう息がきれてい た。思いがけない同僚の惨死にあった直五郎は途方に くれた。今すぐに人びとに連絡する道もなければ、友 の屍を一時的でも離れることは、情において忍びがた

天狗の絵


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