「ふるさとの小径を行く」 -146/168page
北作主膳と風神・雷神
北作のバス停から北に見える丘の頂上に、広瀬川を見下して、二基の小さな石祠があります。向かって右が風神、左が雷神です。下手渡の開拓に大きな足跡を残した「北作主膳」の信仰した神であったといわれます。
主膳は、常陸の国の人で、この地の農民に蚕種の製法等を教えてくれました。当時の農民の暮しは貧困目に余るものがあり、加えて、天災地変が相次ぎました。そこで、主膳は、神の崇りをしずめるためにこの社を祀り、祈ったといわれているのです。
ここから見下ろす広瀬川に、河川改修前までは「巫子ヶ渕(ミコガフチ)」と呼ばれた渕がありました。
神に仕える主膳のもとにあった村娘の巫子が主膳の子をみごもり、入水して死んだところといわれます。その後、主膳も自らの命を絶ったということです。
新しい農業技術の指導者として村人のために我身を省みずに尽くし、やがて、この地に果てた主膳の名は村人の心の中に強く残り、以後この地を主膳の姓をとって「北作」と呼ぶようになったと伝えられています。