上川崎和紙 -008/017page
紙への道 1
確かな下仕事があって、美しい紙が生まれる。
和紙は「寒漉き」と呼ばれる冬の寒い期間に漉いたものが特に上質の紙になる。水が清く、細菌が少ないために原料が腐らないからだ。そのための下仕事は冷たくて辛い。楮を水に漬けて、一本一本丁寧に洗い、鎌で汚れを取り除くことから紙の道は始まる。1 黒皮乾燥
原木からはぎ取られた黒褐色の表皮を黒楮という。剥いだ黒皮は自然乾燥させて貯蔵しておく。2 かずひき(黒皮そぞり)
楮皮の外皮を取り除く作業をカズヒキと呼ぶ。黒皮を半日ほど水に浸け柔らかくしてからアデというそぞり台の上にのせて、カズヒキ鉋丁で一本一本丁寧に削っていく。川や井戸水から上げた氷のついた楮皮である。3 楮ゆすぎ(水洗い)
粗皮を取った楮皮は白皮となる。この白楮を寒い夜に外に出して凍らせて再び乾燥させる。そしてまた一晩ほど水に浸す。これをカズヒタシという。さらに静水の中で一把ずつ丁寧にふるい、白皮にねばりついた不純物を洗い流す。冬の最も寒い時期におこなわれる。