須賀川市人物読本 先人のあしあと -010/134page
ても感心して言いました。
「問題は、そこなのです。ここでお願いするのも、銅版画によるさし絵なのです。いま、言われた細かな部分をあらわすことこそ、新しい医学に必要なのです。とくに、解剖の分野で求められています。今までのわが国の解剖図は、すべて木版画でかかれています。もし、『医範提綱』が、銅版画の解剖図をつけて完成させたなら、これは、わが国では、はじめての銅版画の解剖書になります。」
田善は、この仕事を善んでひきうけることにしました。
また、これをしあげることは、とのさまも喜ぶし、ふるさとの人々にも胸をはれる、と思ったのです。
田善のこころよい返事に、玄真と弟子たちは、とても喜びました。
オランダの医学書を、つぎつぎに持ってきて、田善と夜おそくまで、銅版画や医学のことを熱心に話し合いました。そして、あらためて心をひとつにして、この仕事をやりとげることを、ちかいました。