長沼町勢要覧 -007/044page
水の旅路。
風と水の歌が、きこえてくる。
至堂鬼面山に源を発する江花川―。長沼に は、暮らしを優しく見守るふたつの川がある。 水ぬるむ春。清らかな水がたんぼを潤す。ほ くほくの土に水が張られ、柔らかな苗を迎え 入れる。田畑をそよぐ風が、いつしか、輝く 季節の喜びを歌い出す。あたかも、農を営む 人々を励ます歌のように、心強くかろやかに ……。それは、山より出ずる水の流れを敬愛 し、豊かな土を耕し、天の恵みを待つ喜びを 知る者だけに聞こえる歌だ。
あるがままのものを、そのままに、心静か に受け入れること。それができたとき、人は、 ふだんは開くことのできない自然のハーモ ニーを、耳にすることができるのかもしれな い。長沼の水の音に、ふと耳をすませば、風 と水の歌が流れている。口ずさみたくなるよ うに、爽(さわ)やかで清らかで、優しいぬくもりの ある施律を、人々の心の旅路に刻みながら―。
NAGANUMA NATURE