長沼町勢要覧 -011/044page
緑の香り。
森の懐かしい記憶に抱かれて。
思い、わさびの根を掘り起こしてみた。が、まだそれは充分に育ち切っていない、わさびの子供であった。森には、守るべき森の秩序がある。そっとそのまま、子供を土に帰した。
沢の水をすくってみる。このところ雨がなかったこともあり、本当に透き通るような美しさだ。ここでは水筒などいらない。ぐい、と手ですくい飲み干した水が、疲れた体の隅々まで染み渡る。遠い昔、人の祖先は森に住み、いつしか新たな可能性を求めて森を離れていった。しかし、それが人にとって本当に幸せであったのか。こうして、祖先が暮らした森の懐かしい記憶に抱かれていると、そんな想いがわきあがってくる。
人は、自然の中のひとつ。だからいつも、森とともに在りたい。その想いはただの懐古の情ではなく、長沼だからこそできる。長沼の未来像を指し示しているのかもしれない。
NAGANUMA GREEN PARK