長沼町勢要覧 -014/044page
人の華。
沸き上がる熱き想い。
暦の上では立秋を過ぎても、長沼の熱さは まだまだ終わらない。町の人々の心を燃やし 続ける、長沼まつりがあるからだ。
淡い闇のかなたからやってくる、炎の祭り。 生命を吹き込まれた数々のねぶた、ねぷたが 待ちかねたように躍り出し、ハネト(跳人= 踊り手)がはちきれんばかりに躍動する。
桜の便りが届く頃、もう町では祭りの準備 が始まっている。資金集め、材料の調達、下絵 の準備……骨組みが進むと、厚手の和紙を 貼り付けて、次は絵柄の書き割り。最後の追 い込みの彩色まで進めば、いよいよお祭り気 分は高まってくる。
祭りの日、各地区でつくられたねぶた、ね ぷたが、次第に集まってくる様子は壮観だ。 威勢のいい若衆が、これから宵に向かって繰 り広げられる色鮮やかな風景を予感して、 目を輝かせている。みんな笑顔だ。夕刻から、 長沼のメインストリートは、フリースぺース となる。次々に、祭りの衣装に身をまとった 子供たちが集まってくる。ここが、年に一度 のハレの広場だ。そして、宵の余韻も消え、 あたりが闇に包まれるころ、子供みこし、踊 り流しに続いて、いよいよねぶた、ねぷたが 登場する。
紙と明かりの幻想―。その美しさと強さ、 そしてたくましさが、人の心を熱く燃やす。 ラッセーラー、ラッセーラー……勇壮な掛け 声がこだまする。年に一度、一瞬の輝きのた めに準備を重ねてきた者たちが、いま、一斉に はじけている。祭りのあるところに、人が 生きている。そんな素晴らしい光景を見た。