長沼町の伝説 -026/224page
心を燃え上らせていた。
その中の美しい娘一人が、石神山に登り、鏡を御守りとして抱いていて、毎月のように城に向かって 鏡で反射光線を送っていた。天主閣に殿が家老とともに登った折、鏡の反射の光が殿の顔にふれた。殿 様はこの怪しい光に驚いて、家老に調べるように命じた。
家老は侍を数名使って山狩をしたところ、松の木の根元に娘が一人たたずんでいた。城に連れて来て 家老が調べたところ、かようしかじかと答えた。
この娘は美男子の侍に恋していたことが分かり、家老がその由を殿に申し上げたところ、「良きに計 らえ」との殿の許しを得たので、この娘は、文武両道と力のある美男子の侍の妻となることができて末 睦まじく暮したといわれる。
この記念に、松の大木の根元に鏡を埋め、鏡松と呼ぶようになった。昔から下木之崎の草角力の四股 名は、鏡松と呼ばれている。
(話者 吉田庄一・吉田一郎)