ふるさと昔話 2 - 022/066page

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  狼の恩返し

 

 ざっとむかし、新田に度胸のある、心のやさしい力持ちの若者がいたんだと。
 あるとき、若者は用があって、となりむらにいったんだと。用がながくかかって、夜おそくなってしまったんだと。この夜は月がでていて、あかるかったんだと。月あかりをたよりに、急いで帰ってくっと、道端で「グウォー グウォー」って鳴く声が聞えてきたんだと。近よってよくみっと、狼がもがき苦しんでいたんだと。

 若者はかわいそうに思って「どれ、よくみせてみろ。」ってゆって、月のあかりで狼の口の中をよくみっと動物の骨みたいなのが歯ぐきにささっていたんだと。「よしよし、いまとってくれっから」ってゆって、口の中に手を入っち、とってくっちゃんだと。いたくなくなった狼は、ありがたく思ったんだべ、うんとおじぎをして、どっかに立ち去っていったんだと。
 何日かたってから、若者は用があって、またとなりむらにでかけたんだと。夜もおそくなってっから、急いで帰ってくっと、この前と同じところで、狼がまっちいたんだと。

 若者は急いでいたから、何もゆわねえで前を通りすぎっぺとしたんだと。そしたら狼は、若者の五・六歩あとをだまってついてきたんだと。とうとう、若者げの入口までついてきたんだと。狼は、歯ぐきの骨をとってもらったお礼をすっぺとしたんだべ。若者が
「わざわざついてきてくっち、ありがとう」ってゆったら、狼はどこかに立ち去っていったんだと。そのあとも、若者が用があって、夜遅く帰ってくっと、何回も何回もおともをしてくっちゃんだと。若者は気の毒になって、狼にゆったんだと。
「あんときの恩返しすっぺどして、おともをしてくれでんだべ。その気持ちはわかったから、送り迎えのおともはやめておくれ」「そのかわり、おれのほんのきもちで石の祠(ほこら)をつくつて、おめえを祠(まつ)ってやっから」

 この村の西のはずれには、でっけえ池があったんだと。
 日でりで雨が降んねえときには、田んぼの水をかけんのに、うんとやくにたっていたんだと。
 若者は、この大池のわきの山のところにちっちぇ祠(ほこら)をつ


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