ふるさと昔話 2 - 021/066page

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  手打ちにしっか、半殺しにしっか

 

 昔、旅人があったど、夜になったが近所に家がない。山道にさしかかって心配しながら歩っていだら、ぼやっと灯(あかし)が見(め)える。家があってよかったと行ってみっと、粗末な小屋にじいさんとばあさんがいだど。わけを話してひと晩「泊めてもれえでー」と頼んだら
「こーだどこでよがったら泊める」っていうので厄介(やっけい)になるごどにしたど。

 ところが、寝てうつうつしてっと、とっしょりたちのひそひそ話が耳に入(へえ)ったど。
「ばあさん、あしたの朝(あさげ)は手打ちにしっか、半殺しにしっか」そしっとばあさんが
「半殺しだらおれにでもできっから半殺しにすべい」さあ大変、旅人はわが耳を疑ったが、たしかにそう話した。ひとのいいとっしょりたちと思ったら大間違い、旅人を泊めては殺して金を取る恐ろしい鬼夫婦か。

 朝までいたら殺されっちもう、と、とっしょりたちの寝静まんのを見計ってこっそり逃げ出したど。
 慣れねえ山道を夜通し歩って明け方、山を通り抜けだら茶店があったど。そこで休んで、ゆんべのことを語ったら茶店の人が笑ってんだど。
「お前(めえ)さん、この辺で手打ちっていうのは「そば」のこと、半殺しっていうのは「ぼた餅」のことだ。
「珍しい人にごっつぉうしようっていうおもいやりだった」と聞いてまたびっくり、引っ返(けえ)してあやまんなくてなんねえと戻ってみっと、とっしょりたちがあきれ顔、ゆんべの旅人どうしたのか、まさか狐や狸のいたずらでもあんめえし、と語ってだどこだったっていう話。

手打ちにしっか、半殺しにしっか


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