ふるさと昔話 2 - 036/066page

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  ウソこき千三(せんみつ)の話

 

 昔、千三(せんみつ)って呼ばれる男がいたんだって。千三(せんみつ)っていうのは本当の名前でなくて、何語っても、千回の内三回ぐらいしか本当の事がないというんでみんなからつけられた名前です。

 ある時、千三(せんみつ)どんが急ぎ足で通るのを、田んぼで仕事をしていた人が見つけ「千三(せんみつ)どんウソの一つも聞かせねがい」と声をかけっと、足も止めずに「きょうはウソどごであっか。急に庄屋様がたおっちゃんで知らせに行ぐどごだ」といって通り過ぎてしまった。

 それは大変なことだと行って見たら、庄屋様はピンピン、こりゃ一杯食わされたと思ったが自分でウソの一つもと、たのんだんだから仕方がなかったことです。

 この千三(せんみつ)のウソこきがやがてお殿様のお耳に入り「おもしろい奴じゃ、お城へ呼べ」とのお声がかりで一生一代の晴れ舞台、羽織、はかまに身なりを整えて、お殿様を前にウソを語ることになった。

 たくさんごほうびの品が並んでいるが条件がついた。
 殿様が「ウソ」といいば全部もらいるが、いわなかったら何ももらいずに帰らねばならない。千三(せんみつ)どんも一生懸命、秋の台風でどこの家でも臼(うす)を吹っ飛ばされたとか、その臼(うす)が木の枝のクモの巣に吊(つる)さっていたとか、あの手ひの手と語っても、殿様は「なる程なる程」とうなずいている。

 ふだん村の人相手のようには、うまいウソがなかなか出てこない。困った千三(せんみつ)どんが最後にヘビの冬眠の話をしたんだって。
「ヘビは冬眠といって、寒い期間は、土へむぐって何(なん)にも食わずに春まで過ごす。しかし寒さが長くていつまでも雪があっと出てきられず腹がへって自分の尻尾(しっぽ)から食い始める。いよいよ我慢ができなくなっと、自分の頭まで食う」と、いったら殿様が「千三(せんみつ)それはウソだろう」といってしまったんで千三(せんみつ)どんの勝ち。

 いっぱいごほうびをもらって帰ったという話。


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