ふるさと昔話 2 - 040/066page

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  若衆姿にバケタ法念(二)

 

 むかし、むかしの話です。牧本村と長沼村の二人の庄屋が、町守屋のお寺の法念をたずねてきて、二つの村の境にある峠道に、利口なキツネが出没して旅人をバカにして困るから、法念さんに退治をしてもらいたいとのことでしたから、法念は、それでは、そのうち機会があったらそのキツネにお目にかかることにいたしました。

 ある日、お寺の寺男がお師僧様の用事で牧本村の松本の光明寺へ行ったのですが、暗くなっても帰ってきません。
 それで心配だから法念に、迎えに行ってくるようにと、お師僧様の命令が出ました。

 それで、法念は天狗の「うちわ」でパッサ、パッサとあおいで、うす暗い星空の夜をふわり、ふわりと峠道まで飛んできて山の中をそち、こちさがしましたところ、おりました、おりました。寺男は、木の葉の山の中に裸になって 木の葉を からだにパラ パラかけながら、「いい湯だ、いい湯だ。娘さんよい加減(かげん)だよ。いい気分だよ。お酒もじょうかん、魚もとびきり、うまかった。おいしかった。ありがてえ、ありがてえ。今夜は、こっちさ泊まってゆくべえ」と、ほろよい気分で目じりをさげて、うっとりしながらお風呂にはいっている様子なんです。

 そばで大きなキツネが手拭を頬かぶり、大きなふさふさしたしっぽで下男の背中をなでてまわしているではありませんか。
 下男にはキツネが綺麗な若い娘に見えて、バカにされ酒や 魚やとご馳走になり風呂までよばれて、入っているところなのです。
 法念は考えた どうしたらよいかとね、そうだこうしてやろう……と。
 法念は 美しい 水もしたたる若衆姿にばけて出てきて、娘さん、私と一緒にこちらの風呂に入りましょう、と裸になって、となりの木の葉の風呂へ入りました。

 キツネの娘は「ハイヨ!」と色よい返事をして入ってきて、法念若衆の背中を流しました。「今度は私が流してあげようね」とキツネ娘の後にまわり、背中を流しながら、かくしもってた小刀で娘のシッポをすばやく「ポツン」と切りおとしました。


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