ふるさと昔話 2 - 046/066page

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  病気をなおすそば粉地蔵

 

 ある年の五月から六月にかけて、毎日のように小雨が降り続き、むし暑い うっとうしい毎日が続きました。そうして七月になりました。とうとう悪い病気が流行(はや)りました。
 疫痢(えきり)という流行病(はやりやまい)です。あの村も、この村も大流行で大さわぎでした。現在のように予防注射もない頃でしたから幼ない子どもたちは、ばたばたたおれ死んでゆきました。お医者様もお手あげでした。

 だから村の人々は、くるしい時の神だのみであちら こちらの神様や観音様 お不動様にお参りをして「どうか病気が治りますように」と、手を合せてたのみました。
 「みみずをせんじて飲むと熱がさがる」と誰かがいうと、どこの家でも「みみず」をせんじて飲みました。
 病気にきくというものは、なんでも飲んだり食べたりしましたが、それほどのききめはありませんでした。かえって飲みすぎ、食べすぎて手おくれになり、死んでしまった人もありました。

 ところが、矢沢村の橋本というところに地蔵様がまつられてありました。このお地蔵様は、久右ヱ門さんという人が、お伊勢参りの帰りに品川宿で大病にかかり、生命もあぶなくなった時に、品川の経読み地蔵様に願(がん)をかけて、目出たく治り無事に帰って来てから、品川の経読み地蔵様にそっくりの地蔵様をつくり、自分の屋敷にお堂を建てて家族でおがんでいました。

 そのうち、このお地蔵様が、つね日頃からお参りをしていた人たちだけが誰一人として今度の流行病(はやりやまい)気にかかる者はありませんでした。
 このことが大ひょうばんになりましたから、毎日沢山の人々がお参りにきて、豆一升かそば粉一升を持ってお地蔵様にお供えをして、頭や、お腹や、お尻や、足をと治してもらいたいところを「おんころころ おんころころ」と唱えながら百と八回さすります。そうして七日間(なのかかん)通うと病気が治るのでした。

 このおさすりそば地蔵様は、いまでも昔のままありますが、現在では誰もお参りをする人はほとんどありません。
あれほどはやったお地蔵様が一体どうしたことなのでし


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