ふるさと昔話 2 - 058/066page

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  トンチンカンな男

 

 ある所に、やっこと語っこと何でもトンチンカンな男がいだど。荷物つけた親父を引(ひー)いだ馬が通んながったがとか、おっかをんぶって赤ん坊をさした傘を見かけながったかなどと聞いだりして、みんなを困らせ笑い者になっていだど。ある時、よその村に出かけ、田の草とりしていだ人に声をかけ「おれの連れだが離れちまった。年頃のぐりぐりした目玉の、三十ばっかりの縞の男をしょった風呂敷(ふろしき)が通んながったべか」と聞いた。なんだその話、と考えていたが「そういえばさっき、目玉のぐりぐりした、年の頃三十ぐらいの男が、縞の風呂敷をしょって通ったが、そのことでねいのか。道を聞かれたので教(お)せでやった。」というと、その男「間違えと気違えちゃあるもんだ、うぬが尻おれえなめろ」といい残して通り過ぎたと。

 もう一つ、こわがり同志の話。
 ある所に、よくよくのこわがりがいだど。田んぼもろくに手入れをしねいので米がだんだんとれなくなっちまった。
 それでは困んだろうとは普通の人たちの考え、飯を焚く鍋を洗あねいで使っていたら、中がだんだん小ちゃくなって米が少なくて済むようになったというから、こわがり屋にはちょうどだっだ。

 弁当持ちでよそへ行ぐ時、ひるが過ぎて腹がへった。牡丹餅(ぼだもち)を背負(しょ)っていんだが、おろすのが厄介だから我慢して歩いていっと、向こうから大口あいて来る人があった。口あいていんのだから、腹がへっていんだろうと思い、半分別けしっことにしておろしてもらおうと、出会った所で声をかけだど「お前さん口をあいているが腹がへってんでねいのが、おれ牡丹餅を背負ってんの半分やっからおろしくんにえか」といったら「とんでもねい、ひとの牡丹餅おろすどころでねい、おら、笠のひぼ(紐)がゆるんだが、しばるのが厄介だから、大口あいてアゴで締めてるんだ」といって通り過ぎたど。どっちもこわがり同志の話だない。


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