あさかわまちが生んだ偉人-034/093page
10 富三博士の詩
富三博士は、詩もつくりました。
自然をこよなく愛し、人生をするどい目でとらえる博士の詩は、多くの人々から共感をよび親しまれました。
蜘蛛の子よ
明るい九月の朝の便所
便器のふたの
真白いエナメルの平面の上で
生まれたばかりの
米粒よりも小さい
緑色の蜘蛛の子が
しきりに
方向をさぐっては
考へてゐる
―なるほど むづかしいだらうな
蜘蛛の子よ
君の今ゐる所は
天然ではないのだ
人間の造ったものだ
君たちとは無関係に
君たちの都合は何も考へずに
人間が