あさかわまちが生んだ偉人-074/093page
うにもなりました。でも、私は、社長のイスにすわっていることが、とても耐えられないのです。ゴーゴーと音のする機械の中で、油にまみれて仕事をしていることが、とても幸せなのです。」
稔は、病気の時でもナッパ服を着て工場に行くと、不思議になおってしまったそうです。それほど工場で働くことが好きだったのです。
ナッパ服を着て、工場に立っている自分の姿を思い出しているのでしょうか。目が輝き、いかにも幸せそうな表情です。しかし、時々見える手はごつく、しわが深い職工の手でした。
「私は、一生職工でいたいと思っています。こんな私を、名誉町民にしていただきましたことは、身に余る光栄であります。私は、これからも、日本一の職工と言われるように、努力していきます。」
多くの人達は、目にハンカチを当てながら、いつまでもいつまでも拍手をおくりつづけました。
ゴーゴーという機械の音の中で、油にまみれたナッパ服を着た一人の老人がおりました。