塙町の文化財 -072/105page
羽黒山城
大字塙字城山、竹之内、館山
全山に人工的削平地がほどこされ、当初西側(大字塙)が大手方面と考えられていたが、その後の調査により、大手は東側(竹之内)に開けていることがわかった。東側は土塁・堀・削平地がよく保存され、典型的な根小屋の屋敷跡を完存している。支脈状の尾根は、いずれも堀切が穿かれ、屋根状は削平されてそれぞれ出城を形づくる。山頂部から北方にのびる尾根の構築法は東側と異なり、幅広い堀切と土塁・矢倉台等を機能的に配備した連郭式の縄張である。
伊香油館
大字伊香字南沢
油館は久慈川の西側でひときわ高い山頂を中心とする山城で、古い形式の立地と縄張を有し、その展望の良さから狼煙台の機能を中心とした城砦であったと見られる。山頂の本丸に相当する曲輪を中心として北東に出城的な支峰山頂部と削平した曲輪、搦手にあたる南西には腰曲輪的な削平地が見られる。城からの展望が最も優れているのは、物見台削平地から矢祭町の東館・孤館・石館方面で、この館が東館方面の連絡経路の重要な拠点であったことがわかる。
川上孤屋館
大字川上字花園
館の最高部は物見矢倉台が存在したとみられる土塁をともなう。土塁は南北直線上に約六〇メートル並行して空堀が穿たれ、土塁が西側に盛られている。当城の大手口は、北側の谷間に沢に沿って付けられている道と考えられる。麓には矢倉台状の土盛りが坂道の入口にある。築城手法は比高二重土塁で曲輪構築も大規模で、佐竹氏による羽黒山城をめぐる一連の築城とみなされる。
(町教育委員会編「塙町の城館祉」より)