わたしたちの鮫川村-053/109page

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伝説 (むかしからつたわる話)

一化身した黄金の鮫一

 むかし、むかしそのむかし、いわきの国の東のはしの大きな村(鮫川村のこと)に中野という長者の夫婦がすんでいました。このあたりの田畑はみんなこの夫婦のもので、なにひとつ不自由なく、くらしていましたが、どうしたわけか、この夫婦には、子どもができませんでした。
 それで、子どもをさずけてくださるようにと、村の氏神様にいっしょうけんめいにおいのりしました。長者夫婦のま心が通じたものか、やがて美しい女の子が生まれました。
 その女の子には、紀美という名がつけられました。そしてちょうよ花よと、長者夫婦にかわいがられてそだてられました。16才になった紀美はたいへん美しく、長者の紀美といえば、近所の人はもちろん、遠く、岩代の国までもしし知れわたり、だれひとり、知らぬものはないほど、ひょうばんになりました。
 ところが、まもなく、「このごろ長者さんのむすめさんは、なんだか元気がなく、顔色がわるくなったようだ。」といううわさがたちはじめました。
 うわさがほんとうになり、月日がたっにしたがって、紀美はみょうにふさぎこんで、人々の目をさけ、一日中なやのかたすみで、すすりないておおいることが多くなりました。
 やがて、長者夫婦も、紀美のようすがかわったことに気づき、悪い病気にかかったのではないかと、医者にかけ
化身した黄金の鮫

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