体験学習の手引き -004/036page
(2)下地付け
下地付けには、渋(しぶ)下地と錆(さび)下地の2進りが行われます。渋下地は、豆柿の渋に炭粉(すみこ)、松煙(ぼこり)(松 の木を焼いて作った油煙(ゆえん))、または普通の油煙を混ぜ合わせたものを塗り付け、研(と)ぎを繰り返し た後で柿渋を塗ります。渋下地は厚くないので、上塗り後2、3年すると上塗り肌にヤセが生じ、 独持の味がでます。錆下地は、生漆(きうるし)にとの粉を混ぜ合わせ、これを塗り付けます。平らでなめら かなじょうぶな下地です。下記の1〜8までは、渋下地付けのおよその工程です。
例 漆塗りの順序(重箱) 1 刻苧(こくそ)彫り …… 木地のつなぎ目などを彫る。 2 木がため …… 生漆(きうるし)を木地にすりこみ、防水性をもたせ、狂(くるい)を防ぐ。 3 刻苧かき …… 刻苧(生漆に木くず粉と飯(めし)のりをつぶし混ぜたもの)を彫ったところなどにつめこむ。 4 布着(ぬのき)せ …… 布(または紙)をつなぎ目などに漆のりで張りつける。 5 地炭(じずみ)付け …… 目を止めるために、松煙を漆茶碗の中で柿渋でといたものを塗り付ける。 6 錆(さび)付け …… 松煙の目を止めるために、うすく錆(との粉を生漆でといたもの)をかける。 7 きず見 …… ひびやきずを直す塗りをする。 8 研(と)ぎかえし …… から渋(柿渋になにも混ぜないもの)を塗り、と石で研(と)ぐ。 9 下塗り …… 下塗り漆を塗る。 10 下塗り研(と)ぎ …… 朴炭(ほうずみ)、静岡炭で水をつけて研ぐ。 11 中塗り …… 中塗り漆を塗る。 12 中塗り研(と)ぎ …… 朴炭で水をつけて研(と)ぐ。 13 上塗り …… 上塗り漆を塗る。 (3)塗り
漆塗りは、下塗(したぬ)り、中塗(なかぬ)り、上塗(うわぬ)りの順序で仕上げられます。上塗りには、花塗(はなぬり)、木地呂塗(きじろぬり)が 一般的です。花塗は、会津の場合、卵の白味を漆に混ぜています。これによって、漆の流れ、むら、 ちぢみなどが防げ、ボッテリとした塗り肌に なります。木地呂塗は、木目を生かした塗り かたです。塗りかたは、丸物と板物では違い ますが、塗りの勘どころは、ちぢみのできな いように塗ることです。ちぢみというのは、 漆がのびないでかたまってしまうことです。 塗師の筆さばきは、何十年という経験によっ て支えられてきており、言葉では表現できな いといわれています。(4)加飾(かしょく)(蒔絵(まきえ)・沈金(ちんきん))
漆器で加飾といえば、蒔絵はその代名詞で す。蒔絵は、漆を塗った漆器にさまざまな絵 や模様を描くことです。蒔絵をかく人を蒔絵 師(まきえし)といいます。沈金は、漆器の表面に絵など を彫り、そこに金箔(ぱく)をほどこすことです。蒔 絵はたくさんの方法があり、これらの方法は 長い間に完成され、会津に伝統的に伝わって います。