すばらしい先輩たち 会津人のほこり(第1集) -027/197page
なりました。さっそく、その記事を英語の文章になおし、さらに自分の思い出の中にあるさまざまな情景(じょうけい)も加(くわ)えて、『日本伝道新報(にほんでんどうしんぽう)』に発表したのです。
長い病気の床(とこ)にあって、賤子(しずこ)の心に、なつかしい故郷の会津がよみがえってきました。戦いの苦しみを背負(せお)って、若くして死んだ美しい母の思い出、戦いが終わってばらばらになってしまった家族、−そうだ、私の一生は、その会津からはじまったのだ、という思いが、はげしく賤子の心をゆさぶったのです。あの会津の家はどうなったのだろう、小川には今も冷(つめ)たい、きれいな水が流れているだろうか、あの、秋の日にかがやいていた会津のお城はどうなったのだろう。
『会津城(あいづじょう)の戦い』の最後のところで、賤子はこう書いています。
『23日、お城が敵の手に渡される日である。あの美しいお城、われわれの 誇(ほこ)りと希望の対象(たいしょう)であったあの美しいお城が、敵の手に渡ってしまうのだーー。 』