すばらしい先輩たち 会津人のほこり(第1集) -029/197page

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髪(かみ)をつめたくぬらしています。気ばかりあせるのですが、からだが思うように動きません。

 ふり返ると、今まで住んでいた家も、女学校の校舎も、真赤(まっか)な炎(ほのお)につつまれています。幼(おさな)いころの会津の街(まち)の炎が、心にだぶってうつります。鳴りひびく鐘(かね)の音は、近くの半鐘(はんしょう)の音か、お城の早鐘(はやがね)の音か、逃げまどう人々の群(む)れ、炎ーー ようやく助けられて、知りあいの家にたどりついた賤子(しずこ)は、夢をみているようでした。

 それから数日、賤子の病気は、やや、もちなおしたようにみえる日もありました。避難先(ひなんさき)の知りあいの家で、賤子は、もう誰にも会おうとしませんでした。夫(おっと)と二人きりでした。夫と二人だけでいられるなんて、七年間の結婚生活のうちで、初めてのことのように思われます。

「私が死んだら、親しい人にだけ知らせてください。伝記などは、ぜったい書


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