すばらしい先輩たち 会津人のほこり(第1集) -125/197page
母上からは、特にそなたの今後のことについてたのまれました。………今日ただ今からは、あきらめてわしの指示に従うように。」
これを聞いて、五郎はぼう然として声も涙も出ませんでした。気を失なったようにそこに眠ってしまい、肩(かた)をたたかれて起こされたのは、真夜中(まよなか)でした。あんどんに火を入れた清助おじは、五郎が武士の子の姿でいるのは危険(きけん)だから、百姓の姿に改(あらた)めた方がよい、といって、五郎の髪(かみ)の毛をそり落として丸坊主(まるほうず)にし、留吉(とめきち)の子供の古着(ふるぎ)や野良着(のらぎ)に着がえさせました。そして五郎の衣服(ふく)や刀を屋根裏にかくしてしまいました。この夜こそ、五郎にとって武士の子の姿の最後の日となったのです。
五郎の面川沢(おもがわざわ)での生活は、次の年(明治二年) の六月まで続きました。ここでの9ヵ月の日々は、五郎にとって生涯(しょうがい)忘れることのできない悲しい思い出として、深く心にきざまれていきました。面川沢では、勉強しようにも、本