すばらしい先輩たち 会津人のほこり(第1集) -124/197page
「母たちのようすはわかりませんか。」
五郎は心配げにたずねました。
「のちほど………………。」
清助おじは、低い声でそう言っただけで奥の部屋に入りました。奥の部屋に居た難民(なんみん)たちを外に出してから、五郎ひとりを呼んで、母たちの最期(さいご)のようすを話すのでした。
「今朝のことです。敵兵が城下に侵入(しんにゅう)してきたので、そなたの母上をはじめお家の人一同に、ここを立ちのいて面川沢へ行くようにとおすすめしたのですが、お聞き入れになりませんでした。祖母(そぼ)、母、兄嫁(あによめ)、姉それに下と妹までが、いさぎよく自害(じがい)されましたぞ…………。」
「………………………」
「わしは、たのまれて介錯(かいしゃく)をしたあと、家に火を放(はな)って立ちのいてきました。