すばらしい先輩たち 会津人のほこり(第2集) -184/203page
寺が並んでいて、ながめもよく、静かなようすがただよっています。
吉祥坊(きっしょうぼう)という古いお寺に、五十七歳の西郷四郎は、病気をなおそうと、移り住んでいました。
「ここに来て、もう二年が過ぎた。」
すばらしい瀬戸内海の風景(ふうけい)、きれいな空気と、おだやかな気候にめぐまれて、早くよくなると思われた病気でしたが、なかなかよくなりませんでした。
最近の四郎は、自分でも、だんだん元気のなくなっていくのが、わかるようでした。大好きな弓をひくことも、しなくなりました。庭のすみには、大きな弓のまとが、四郎のうえたイチジクとサルスベリの木に、ささえられるようにして、ひっそりと立っています。
好きな散歩もできなくなりました。山の中腹(ちゅうふく)を西の方に行くと、千光寺(せんこうじ)というお寺からながめる瀬戸内海(せとないかい)のタ焼けは、故郷の津川(つがわ)の阿賀野川(あがのがわ)と常波川(とこなみがわ)の合(ごう)