北会津の昔ばなしと伝説 -031/238page
9 輝井宮(てるいのみや)
むかし、むかし、あっただど。
陸奥(むつ)の国が戦(いくさ)をしかけられた頃のお話なんだど。
その陸奥(むつ)の国をめざして、旅を急いでいる若い姫様(ひめさま)とその乳母(にゅうぼ)であろう二人の主従(しゅじゅう)が、通り掛(か)かっただど。姫様(ひめさま)はいじゃり[足が悪い]のため、思うように歩くことも出来ずに、ようやくこの地までたどり着いただど。
その年は雨が多く、たびたび洪水で川止めになってしまい、陸奥(むつ)の国に帰ることができなくなったんだど。
早く帰って父母の安否(あんぴ)をたしかめたいと思っても、どうにもならず、月日を送るうちに、心配のあまり姫様(ひめさま)は、とうとう病(やまい)の床(とこ)に伏(ふ)すようになってしまっただど。秋の深まる頃(ころ)、