北会津の昔ばなしと伝説 -034/238page
然雁(ぜんかり)が飛び立ったのを見て、敵(てき)がかくれていることがわかり、大合戦(だいがっせん)になっただど。
権五郎景正(ごんごろうかげまさ)は必死に戦って、夢中(むちゅう)で敵の中に斬(き)りかかっていったんだど。
その時、突然(とつぜん)左の眼(め)に矢がささり、その眼(め)からはどろどろと血が流れ、その形相(ぎょうそう)は鬼のようであっただど。
それを見た近くの者が、景正(かげまさ)の眼(め)の矢を抜(ぬ)こうとして、顔に足をのせて引き抜(ぬ)いたところ景正(かげまさ)が
「武士の顔面(がんめん)に足をのせるとはふとどきなやつ。」
と猛(たけ)り狂(くる)っただど。
それから、
「この矢を射(い)た者は誰だ。名を名のれ。」
と大声で探し歩いただど。
その時、