北会津の昔ばなしと伝説 -045/238page

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 「まだ、水かさが多いがらやめとけよ。」

と言うのも聞かないで、少しの晴れ間を見て、はけごと網(あみ)を持って出かけていっただど。雨降(あめふ)りの後(あと)は、思わぬところに魚が隠(かく)れていて、

 「いつもより、たんと取れんぞ。」

と言いながら、夢中(むちゅう)になって取っていたんだど。

 そしたら、川の中から「ぬー」と手を出した河童(かっぱ)が、

 「俺のエサを、横取(よこど)りすっとは、何事(なにごと)だ。」

と言いながら、三郎太(さぶろうた)の足を「むんず」とつかんで引っ張り込んでしまっただど。

 三郎太(さぶろうた)はひっくり返って、深(ふか)みに「ずるずる」と入り込んでしまっただど。なんぼもがいでも、どんどん流(なが)されて、行方(ゆくえ)がわからなくなってしまっただど。村中総出(むらじゅうそうで)で探(さが)したげんじょ、どごにも見当だんながったそうだ。

 それからというもの、お咲(さき)は毎日ぼんやりと川のほとりに立って物思(ものおも)いに沈(しず)んでいるこ


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