北会津の昔ばなしと伝説 -060/238page

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19 親孝行(おやこうこう)の与吉(よきち)

 むかしあっただど。

 あるところに大変親孝行(たいへんおやこうこう)な与吉(よきち)という十五歳の若者がいただど。母は病気で長い間、床に伏(ふ)せていたんだど。

 ある時、北の方にある沼の浮草(うきぐさ)の実がなぁ、母の病(やまい)に良く効(き)くと聞いてな、居ても立っても、居られなぐなっただど。

 ただ、母の病(やまい)を一日でも早く治したいと思って、お上(かみ)の厳(きび)しい高札(こうさつ)も、捉(おきて)も目にも耳にも入らず、母にも話さず、浮草(うきぐさ)の実を取ってきて母に与(あた)えたんだど。

一回、二回とな、度重(たびかさ)なって遂(つい)に、お上(かみ)に知れることとなったんだど。

与吉(よきち)は、御奉行様(おぶぎょうさま)の呼び出しに、(注1)白州(しらす)に平身低頭震(へいしんていとうふる)えるばかりであっただど。

 「これ、お上(かみ)の捉(おきて)を破(やぶ)った大罪人(だいざいにん)、与吉(よきち)に相違(そうい)ないか。」


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