北会津の昔ばなしと伝説 -070/238page
22 藤兵衛稲荷(とうべえいなり)
むかし、むかし、羅漢山(らかんざん)に藤兵衛(とうべえ)というキツネがいたんだど。
ある日のことだったど。その年は、ひどい日照(ひで)りが続いてな、田植えは終わったんだけどな、みんな川から水を運んで田んぼにかけたり、鹿島(かしま)のお宮に行って雨ごいのお祈りをしたんだけどな、ちっとも効(き)きめがなかったんだど。
このままでいったらな、お百姓(ひゃくしょう)はもちろん武士や商人たちも食べる米がなくなっちゃうわけだんべ。
そんじゃから、町の者(もの)全部がな、それぞれに川の水を桶(おけ)に汲(く)んでは、田んぼに運んだんだど。
そのうちに、みんなくたくたに疲(つか)れっちまってな、働く元気もなくなってな、川の土手にばたばたと倒(たお)れて眠っちまったんだど。