北会津の昔ばなしと伝説 -099/238page
31 三鈷(さんこ)の松(まつ)
昔、紀州(きしゅう)生まれで仁範(にはん)という立派なお坊さんがおられたんだど。今より六百二、三十年前に、葦名直盛(あしななおもり)という会津の殿様のすすめで鎌倉より下荒井川崎(しもあらいかわさき)においでになり、蓮華寺(れんげじ)というお寺を建てられたんだと。
仁範(にはん)という人は高齢になっても信心(しんじん)が厚く、高野山(たかのやま)に詣(もう)でて臨終(りんじゅう)を迎(むか)えようと思い、旅支度(したく)をして杖(つえ)をつきながら蟹川(かにがわ)まできたところ、川岸(かわぎし)で釣りをしていた白髪(はくはつ)の老人がおられたんだと。
老人は仁範(にはん)を見ると
「どこに行きますか。」
と聞いたので、仁範(にはん)は