北会津の昔ばなしと伝説 -198/238page
かろやかに、リズミカルに、そして休みなく、その音は聞こえました。
ソロリソロリと沼に近づいて見ると、うす明りの中にも、はっきりと、ひとりの美しい娘が、月の光をたよりに、一生懸命にはた織(お)りをしているではありませんか。
美しい鈴を振る音に聞こえたのは、はた織(お)りの音だったのです。
その娘のあまりの美しさに、この男は思わず
「あっ。」
と、声を出してしまいました。
すると、その娘は、びっくりしてはた織(お)りをしていた手を止めて、こちらをふりかえったと思うと、スーツと消えてしまいました。
村に帰って来たこの男は、昨夜の話を村人にしました。この話を聞いた人は、自分も見たいと、スズブチに行った人も何人かいましたが、その後、二度とあらわれなかったということです。