北会津の昔ばなしと伝説 -216/238page
と、わかりました。
しらひげの洪水があった数日後、朝早く、それもまだうす暗い時分から、この杉の木の上で、からすが、ガアガアと鳴いていました。
村の人々は、あまりにからすが、鳴き騒ぐので、気味悪く、話し合っていました。
「なんだって、からす鳴ぐごと。」
「したがナス。きょうの鳴きかたは。ちょっと違うみたいだ、オラ。」
「からす鳴きが悪いと、人が死ぬというていんだゲンジョ、誰か、また死んだのがマ。」
「この前の大水のとき、だいぶ人も流されて死んだっていうから、それで鳴いているんだべかナス。」
「それにしては、きょうのからすの鳴き方は、妙だから。」
「見てみっせ。あの七兵衛屋敷(しちべえやしき)の杉の木の上。普段とからすのようすも違うから。」
「杉の木の下に何かいるではねえかよ?」