喜多方市勢要覧 -015/026page
The Roman of Kitakata
喜多方ラーメン。今やその 名は全国的に広く知られ、 札幌、博多とともに日本 3大ラーメンの一角を担う存在と なっている。喜多方ラーメンの歴 史は、大正の末期まで遡り、中国 から渡ってきた一青年が、屋台を 引いて町中を売り歩いたのがその はじまりとされている。当時、ラ ーメンは「支那そば」と呼ばれ、 味も醤油のみというシンプルなも のであった。しかし、そのおいし さが次第に人々のあいだに広がり、 屋台の数も新たに2軒、3軒と増 えていった。そして現在では、市 内に約140軒ものラーメン店が ひしめき、それぞれに自慢の腕と 味を競い合っている。
喜多方ラーメンのおいしさ、人 気の秘密にはさまざまな理由が考 えられるが、まず第1に、麺の特 徴が挙げられる。喜多方特有の「平 打ち熟成多加水麺」と言われるこ の麺は、一般的には幅が約4mmの 太麺で縮れがあり、時間をかけて 熟成させることにより、コシのあ る麺になっている。
2つ目には、良質の水がある。 その澄んだ水によって、麺と高品 質の醤油が作られ、豚骨や魚介類、 さらには地元でとれた野菜などを ベースにしたスープが、喜多方ラ ーメンのおいしさをあますところ なく引き出している。
3つ目に挙げられるのは、喜多 方の風土や地理的条件である。会 津盆地の北部に位置する喜多方市 は、古くから周辺地城の産業の集 積地であり、多くの人が作物を売 るために集まってきた。これらの 人々は、商品を売った後、ラーメ ンを食べて帰る ことが多かった。 なぜなら、会津 盆地は海から離 れているために 海産物や肉類が 手に入りにくく 人々にとって、 ラーメンは手軽 なごちそうであると同時に、貴重 な蛋白質、栄養源だったのである。 その他にも、田畑が豊富なため、 原料の粉の調達には事欠かないこ とや、会津若松など、近隣にラー メンの食材を扱う問屋が多いこと、 また、喜多方は良質の地下水を利 用した醸造業が盛んであることな どの環境的条件が理由となり、喜 多方ラーメンはこのまちに浸透し ていったのである。
ラーメンは昔から多くの市民に 愛され、支えられてきた。そして、 長い歳月のあいだにその味も、店 主と客とのコミュニケーションに より、変化し続けてきたのである。 醤油味が中心 の喜多方ラー メンも、最近 は塩味や味噌 味といった各 店独自の味が 登場し、さら に味わいの幅 を広げている。