喜多方市勢要覧 -016/026page

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The Roman of Kitakata

喜多方散歩道

1 慈悲のように Tenderness

人の優しさが身に浸みて秋、
慈しみ深い人々の澄んだ瞳に出逢う。

石仏

 晩秋の陽だまりのなか、秋桜にそっと寄り 添われるように、静かに座っておられる石仏 に出逢った。長く厳しい冬を迎えるまえの、 束の間の小春日和の午後である。そのお顔が あまりにも優しく穏やかに感じられ、しみじ みと心やすまる思いがしてくるのは何故だろ うかと考える。

 厳しい自然風土のなかで生きる喜多方の 人々の素朴で温かな素顔が、そのまま石仏の お顔に表れているようにも思える。喜多方の 人々の多くはみな働き者である。男たちも女 たちも、朝早くから夜遅くまでよく働く。子 供たちは屈託のない笑顔を誰にでも気軽に投 げかけて来る。東北人の特質である勤勉な性 格と素朴でおおらかな心情を、例外なく喜多 方の人々は持ち合わせていると感じる。

 慈愛に満ちた石仏のお顔はまた、どこか遠 い祖父や祖母たちの顔を思い起こさせる。深 く刻まれた額のしわ、柔和で優しい眼差しにあ ふれた、あの懐しくも逞しかった祖父や祖母 たち。ふるさと喜多方の歴史をつくり、喜多 方独自の文化を築き上げてきた偉大な先達た ちであった。陰りはじめた秋の陽の中で、石 仏たちは一瞬、微笑まれたかのように見えた。


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