喜多方市勢要覧 -019/026page
The Roman of Kitakata
喜多方散歩道
4 佳人の面影 Yumeji Takehisa
ほの暗い蔵座敷の向こうに、
大正ロマン竹久夢二の面影が揺れる。大正ロマンの画家、竹久夢二が喜多方の笹 屋旅館に滞在したのは、大正10年の秋と昭和 5年の秋の2回である。夢二といえば、ほっ そりとした姿態に大きな瞳、どこかはかなげ な女性像、日本女性の美しさを追い求めた画 家、そして詩人としても知られる。
多くの女性の憧れの的だった夢二にとって、 モデルとしても、伴侶としてもかけがえのな い女性であった「お葉さん」は、みちのく秋 田の生まれ。隠やかな瀬戸内に生まれた夢二 には、みちのくの厳しい風土、厚い人の情け、 そしてたおやかな女人たちは、心ひかれる存 在であったのだろう。雪深いみちのくの地を 夢二は事あるごとに訪れている。
当時の笹屋旅館の主、岩田圭一郎は、旅館 業のかたわら画商を兼ね、笹屋で画会を開き、 絵画の展示即売を行っていた。そうした縁で 笹屋旅館を訪れる画家も少なくなく、一世を 風靡(ふうび)した竹久夢二もその一人であった。
喜多方に滞在中、夢二は好んで街を歩いた といわれる。笹屋旅館には、夢二の描いた作 品が4点残されている。蔵造りの笹屋旅館は、 当時そのままの姿で残っており、夢二の絵は、 玄関奥の蔵座敷に展示されている。