高郷の地質と化石 会津化石研究グループ -000-03/066page
ガイドブックの刊行にあたって
元高郷村郷土資料館長 齋 藤 右 門人類の歴史を知るには、その土地の地層や地形の成り立ちを知り、われわれの祖先がどのような生活をなし、現在に至ったかを見極めることが最も重要なことだと考えられます。
恵まれたことに高郷村は、古い時代の地層が随所に見られ、しかもその中には有孔虫の化石をはじめ貝化石が発見されており、さらに近年になって、わが国でも珍しいオオカイギュウ化石などが発見されています。一方旧石器時代の塩坪遺跡、さらには村内の各所から原始社会の縄文土器等も出土しています。これから推しても約2000万年前の本村の地層が歴然と判明され、また有史以来の遺跡も数多く散在し、高郷村が古代の資料の宝庫であることがわかります。
昔から多くの地質研究者や大学の研究者が訪れて、現在でも論文の対象となっております。 また、昭和50年代の初期から上野、一町新田、塩坪、博毛と次々と遺跡地が発掘されて、あまりにも遺物が豊富なこともあって、逆に現在、村民の間では、少々関心が薄くなっています。けれども幸いなことに昭和58年4月に、村当局の深いご理解を得て地質学的、考古学的、民俗学的成果や村文化財の一部を一堂に集めての村民共有文化遺産の保存施設として「郷土資料館」が開設されております。
これら展示品の整理保存について、日夜学究の方々の暇のないご努力と村文化財保護委員の方々が、調査復元にご尽力いただきましたことに、深く感謝申し上げます。
今般、郷土資料館の第一展示室の「大むかしの高郷の自然」をわかりやすく説明した「高郷の地質と化石」のガイドブックが刊行されたわけであります。村の自然史や文化財を知り得る手助けに、この本をベースにして多くの方々が御活用くだされば幸甚と思います。