高郷の地質と化石 会津化石研究グループ -023/066page

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 カイギュウ(現存するカイギュウは、ジュゴン、マナティーのみ)は、クジラと同様、一生水中で生活する哺乳(ほにゅう)動物です。アシカやトドのように休息や出産などのため、陸に上がることはありません。ですから、水中生活に通するように、体にさまざまな特徴がみられます。体は、やや太めの流線形で、前ひれが一対、尾ひれはクジラのような半月状か(ジュゴン)、扇のように後方に突きでています(マナティー)。乳首はゾウや人のように胸、つまり、前ひれの付け根に一対あります。伝説の「人魚」は、このカイギュウ(ジュゴン、・マナティー)の姿を、モデルにして生まれたといわれています。特に頭の部分の特徴をあげると、鼻の穴が、呼吸しやすくするため、頭の前方で、上を向いています。また、上あごの前の部分が、くちばしのように突きでて、口は、やや下を向いています。高郷で見つかった頭の化石も、まさにこの特徴をもっています。そのような口とまわりのくちびるをたくみに使って、カイギュウは、浅い海や川の底、岸にはえる草や水面に浮いている植物を食べています。また、カイギュウは、クジラと違って、緻蜜で、重い骨をもっていることも特徴です。

 カイギュウの進化史を、振り返ってみましょう。カイギュウの最古の化石は、始新世の地層(ジャマイカ)から見つかっています(第12図)。すでに水に適した体になっているので、先祖のカイギュウはもっと古いものと思われます。ゾウの仲間とは、歯のはえ方が水平交換という、共通の特徴があるため、互の祖先は同じ動物だったと考える人もいます。そして、漸新世には、ヨーロッパ、大西洋を中心にハリセリウムのなかまが栄えていました。ハリセリウムは、くちばしのように突きでた上アゴが下へ曲り、上の前歯が牙のようにはえていました。一方、太平洋では、塩坪層などの、中新世になると、ドシシーレンという新しいタイプのカイギュウが出現・生活していました。このドシシーレンについては、後で詳しくのべますが、太平洋だけに生息し、独特な進化を遂げ、その子孫は、人間によって捕り尽くされてしまったステラーカイギュウです。そして、現在、生存しているカイギュウは、マナティーとジュゴンのみになったわけです。マナティーは、体長約3m、アフリカ西海岸の海と川、アマゾン川、フロリダ沿岸の海とそれに注ぐ川に棲んでいます。一方、ジュゴンは、体長約3.5m、インド洋から西太平 洋沿岸の海に棲んでいます。このように、いずれも暖かく、浅い海や川に棲み、海草を食べています。たいへんおとなしく、攻撃的なところがない動物で、人の手によって保護されなければ、数がどんどん減ってしまうといわれ、現在、国際保護動物となっています。


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