高郷の地質と化石 会津化石研究グループ -040/066page
近くの会津坂下町立川(たちかわ)では更新世からバタグルミの化石が多く産出していますので、更新世以前から当地域にバタグルミ(Butemut)は、相当生育していたと考えられます。現在バタグルミは見られませんが、縄文遺跡からも出土しているので、少なくとも数千年までは繁茂していたと考えられます。本種は鮮新世に日本以外に、シベリヤ、ヨーロッパなどより報告されています。今日、渓谷などに自生しているオニグルミは第22図に示したバタグルミがマンシュウグルミを経て進化したものと考えられます。
ヒシの化石も産出していますが、ヒシ類は第三紀には北半球に広く分布し、日本から化石種が12種報告されています。現在日本には第23図に示したヒシ・ヒメビシ・メビシとオニビシ・イボビシの5種が自生していますが、会津方部のものは大半はヒシです。
他の水辺植物ではミツガシワが山都町の堰沢(せきざわ)などに自生し、化石は会津坂下町立川の更新世の地層から採集されています。化石としては産出していませんが、ヒルムシロ類やミズトクサ・デンジソウなど分布していたと考えられます。
陸上にはシダ植物のヒカゲノカズラ・スギナなど多く繁茂し、裸子植物の化石は産出していませんが、メタセコイヤ(アケボノスギ)は鮮新世の日本の地層から産出し、1941年 Metasequoia disticha Miki と発表され、現存しないと考えられていましたが、中国揚子江支流の麿刀渓の奥地で1945年に生存しているのが発見され、1950年より、日本に苗木が入り、各地で植栽されています。他にスギ・サワラ・アスナロ・クロベ・ゴヨウマツなどは山頂近くか、ブナ林などに自生していたと考えられます。アカマツは現在、広く生育していますが、昔は瀬戸内海付近の丘陵地に自生していたものを、奈良・平安の頃、全国的に薪炭用などに植林して分布が広がったと考えられます。
草本の植物は化石になりずらく産出しませんが、帰化植物のシロツメクサ・ヒメジョンなどやコハコベ・イヌビエなどの史前帰化植物(しぜんきかしょくぶつ)(縄文期末の農耕文化とともに移入されたもので人里植物の大半)以外のものに、近縁の種類は生育していたと考えられます。美しい花で山草として喜ばれている、トガクシソウ・シラネアオイ・オサバグサ・アワガタケスミレは鮮新世にも美しく咲いていたと思います。
第22図 約×1/2
第23図 約×1/2