高郷の地質と化石 会津化石研究グループ -061/066page
にいえば、それぞれの兼務であっては、主体的・独立的な郷土資料館の運営に制約をうけることになるからです。早急に、郷土資料館を独立機関として人的配置をし、運営を推進する郷土資料館運営委員会を設置すべきです。これが不可能でも、資料館専任事務にたずさわる人員を配置すべきです。資格のある学芸員(がくげいいん)の配置とはいかないまでも、資料館建設に当って臨時雇用(りんじこよう)した体験を生かすべきで、あの展示内容や作業に見せたパワーを専任的(せんにんてき)な仕事として持ち続けたいものです。ここにも、「はじめからだれでも専門家ではない」のモットーを確認して、長い目で人材を育てていくことが最も大切なことなのです。開館して1年を経(へ)れば、陳列替(ちんれつが)えともからみあい調査・研究がいやでも必要になってきます。是非(ぜひ)とも、資料館専任事務員が欲しいところです。
また、郷土資料館をどのように役立てさせるかの問題もでています。村民や県民さらに県外の人々にも、有効適切(ゆうこうてきせつ)に利用してもらう手だてをどう講(こう)じるかは、頭を悩ます問題になってきます。学術的な価値尺度だけでは、入館者を動員することはできません。特に、本館は観光ル −トから外れた農山村部での運営(うんえい)に係(かかわ)るので、サービスのためのアイデァをださねばなりません。野尻湖発掘時のナウマンジュウをまねて、カイギュウマンジュウとか、緑色凝灰岩(荻野 石)の軟(やわら)かい石質を利用してインテリア風な加工物をつくるとか、いろいろなサービスを考え てみる必要があります。
このような直面しているいずれの問題点も、過疎(かそ)の地方自治体がかかえている財政難によることが一番大きな原因になっています。せっかくの郷土資料館完成も、金と政治力と学者の権威のいかんによって存続が危(あや)ぶまれる脆(もろ)さも秘(ひ)めているという、これは最近文化施設をつくる地方自治体が多いなか、地方文化のあり方に関する共通課題の一つになっているところです。それにしても、私たちは、地元住民の郷土の文化財を愛する心の強さを見たいま、常に地元の理解と協力をえる努力を惜(お)しまず、調査・研究の成果を地元に還元(かんげん)していくならば、つまり地元主義、それに自前精神の活動を続けていく限り地元住民はたくましい力を発揮し、多くかかえている困難な課題を克服(こくふく)していくものと思われます。郷土資料館のあり方をいっしょになって考えていくことが、新しい展望(てんぼう)を持ちえることにつながるのです。それにどうしても、高郷村郷土資料館が、この地方の教育や研究に役立ち、地方の文化を発展させていく、その役割を背負い続ける、という願いを私どもはもっています。
追 記
なお、資料館第一展示室を完成するにあたって次の方や団体から心温まる協力をいただきましたので紹介します。