会津本郷の野仏 -003/090page
会津本郷の野仏調査と私
とちぎ民俗文化研究所 長 尾 島 利 雄
(社)栃木県生活文化協会顧問私が会津本郷の地を訪れることになったのは、宇都宮大学民族研究会顧問に就任した時、このサークルの熱心なメンバーの一人に会津本郷町出身の学生「本田良智君」がいたことからはじまる。その教え子たちとともに何回か彼の家にお世語になり、この地の簡単な民族調査をしたり、キノコとりなどをしたものである。
こうした中でちょっとしたことが縁となり、二年余にわたって「町文化財調査委員会」の手がけてきた「野仏調査」に助言をするはめになってしまった。現地を歩いての直接調査は二回だけだったように思うが、野仏の写真・文献・電話・書籍による問い合わせは十回を越える程であった。
文化財調査委員の方々が、会津本郷の地をこよなく愛しておられ、野面にとり残されたようにひっそりと立って、先人たちの素朴な民間信仰の姿を現代に生きる私たちに語りかける野仏調査に情熱をもやし、この多難な仕事を今度みごとに完成されたことはすばらしいことといえる。
今回の現存する野仏調査は古くは正徳(2111)より、天保(1843)にわたる百二十余年が野仏信仰のピークであったことを証明した。
ここに汗と努力と文化遺産を愛する心の生み出した本書が多くの人々に愛読され、この町の文化財保護に活用されることを切望するものである。