時空抒情 新鶴村村制施行100周年記念誌 -039/057page

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 しかし実は、こういった思想は、早く新鶴 村にもあった。『村誌』からそのまま抜粋して みよう。
 「佐賀瀬川は特に小学校に遠隔であったため か、荒井秀吉氏の如き特に教育に熱心な指導 者があったためか、明治十八年文学館と称す る夜学校を興隆寺内に設けたり、明治三十八 年小学校に実業公民学校設置の前年、既に農 業補習学校を設けている。この機運は当時教 育の先覚者のあった他の部落にもあったもの か、殆ど同時に下小沢にも農業補習学校、後 に私立小沢農業補習学校と改称したものが設 立されている。…図書館その他・佐賀瀬川の 荒井秀吉氏は教育が将来の農村指導の基礎を なすことを思い、既に部落に文学館、補習学 校などを特設すると共に、明治四十一年(一九 〇八)五月十八目私立荒井図書館を創設して 村民に開放した。この蔵書は一、七〇〇部二、八 〇〇余冊に達する。やがてこれを一部落民の 利にのみ供すべきでないのを覚り、大正五年 十一月この全部を挙げて新鶴村に寄付、翌々 大正七年(一九一八)新鶴図書館と改称、新鶴 第二小学校の一室を充てて広く村民への図書 閲覧に供した」
 この「荒井図書館」の蔵要目は、今現在、新鶴 村民俗資料館に保存されている。この、農 村に文化を″といった先人のいたことを、私 たちは忘れてはならない。また、明治維新、 戦後改革に相当する第三の大変革期と位置づ けられている現在、心の豊かさを求められる 時代こそ、大地に根ざした農業の価値が復活 する時でもある。
 ゆっくりと歩くような速さで−私たちは 新鶴農業の歴史を振り返り、田園の宿する意 味を確認する必要があるのではないだろうか。

荒井図書館の蔵書
新鶴村民俗資料館に保存されている「荒井図書館」の蔵書。
『世界文明史』や『通俗三国志』『校刻日本外史』『古事類苑』などがあった


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