新鶴村の野仏 -005/055page
一年に六回講中の人は講宿に集り、一晩中眠ることなく酒を呑みながら世間話や仲間との相談ごとを話し合って、夜明けを待つ。庚申の晩に男女の交わりをすれば頑迷な子供が生れ、子供は悪人となり、父子とも貧人となると云ういい伝えがあった。
庚申祭りに唱える祭文
オオコウシンデコウシンデマイタリマイタリソワカと三十三回唱え、次に南無青面金剛童子と五十回唱える。
(8)二十三夜塔
二十三夜塔は江戸時代中期後が多く造立され、全国的に普及したものと思われます。村内では二十三夜塔が多く、此の夜の本尊は勢至菩薩と言われ、男だけの講中でもあったが、女性のみの講が多い。毎月と云う事ではないが、二十三夜の行事で精進し勤行ののち飲食を共にし、この夜妊娠すると片輪の子供が生まれるなどの言い伝いもある。
(9)道祖神
道祖神は、村境などにあって邪神の入らないように守ってくれる神様である。又、サイノ神(塞の神)の信仰も古くからあったと云う。今は道路の安全・縁結びの神や性の神として信仰が見られる。又、道陸神とも云う、男女の性器に象徴される古来から性器崇拝があったと考えられる。
(10)念佛供養塔
村内では二基はど見受けられるが、明和年間(一七六五年)と年号不詳のものだけ見受けられた。
(11)雷神様
雷神様は、明和年間のものと年号不詳のものが見受けられたが、雷神は落雷の時建てたと云ういい伝いがある。神鳴は鳴る神とも呼ばれ、もっとも恐れられた自然の一つであった。今でも祭り日には重箱など持ち寄り、豊作祈願をする事もある。
(12)山の神
山の神は狩猟や山仕事を守ってくれる信仰の一つである。又、豊作を祈る山の神があり、又安産を祈る山の神もある。
土公神は土をつかさどる神で、春はかまど、夏は門、秋は井戸、冬は庭に居るとされ、其の場所を動かせば、たたりがあると言われている。
(13)勢至菩薩
大勢至・勢至菩薩の二基ほどあるが、これは享保年間(一七一七年)宝暦年問(一七五六年)のみが見受けられた。種子は「サク」知恵を表す。
観世音とともに阿弥陀三尊を構成する十三仏の一つでもある。観世音菩薩に続いて九番目にあげられ、一周忌にあてられる。その像容は、来迎相では観世音菩薩と同じに造像され、観世音の宝冠中に弥陀の化仏があるのに対して、勢至菩薩の宝冠上の宝瓶によって識別される。
一般には弥陀三尊に見られるように、二臂合掌像である場合が多い。村内には文字塔の角柱が見受けられた。
(14)不動明王
不動明王は一切の罪障を打ち破り、動揺しないところから不動と云う。大日如来の教令輪身で、明王部の代表的な存在として、五大明王や八大明王の主尊とされる。仏のやさしい姿では教化できない。強情な衆生に対して忿怒の形で説得する如来の変身とされる。
その像容は右手に宝剣、左手に羂索を持ち、磐石座に立つものが多
寺院やお堂に祀られているのは脇待として、「コンガラ童子」が祀られている。明王は治病・安産・災害・財福を得るなどの祈願をかなえてくれる。
(渡部重夫)