鮭立磨崖仏 - 135/135page
何百回となくシャッターを押しているうちに、光のぐあいによってさまざまな表情を見せて頂けるのに気がつきました。緑陰のゆうの中で風化したおぼろげな輪郭からも、しだいにお姿が浮き彫りになって見えるようになり、み仏の声がきこえてくるような気がして、心震わしたことが幾度あったことでしょうか。
飽食の時代といわれているいま、そして―日本人は金は持っているが心の貧しい人たちね―と批評されているこのごろ、この写真集が、自然の恵みの前にひざまずき、苦しみを共にし楽しみを分かちあった、心豊かな先人の生活をふりかえってみるきっかけにしていただければ幸いです。
また、ここは修験道で信仰されている天部、垂迹部の尊像が多く、このような磨崖仏が確認されているのは、県内では鮭立だけのようです。全国的にみても数少ない貴重なものです。このような文化遺産があることを広く知って頂くとともに、再び雑木の中に埋もれることがないようにと願っています。
今井亮修 撮影/解説担当/山入地区石塚在住