昭和村勢要覧 -002/024page
昭和の音は機織りの音
日本古来のからむし織を守りつづける人々。
昭和村で、からむし織のための苧麻の栽培が行われるようになったのは中世。六百有余年もの歴史を誇り、現在では本州唯一の生産地であり、その技術は貴重な日本の文化遺産ともいえます。からむしは近世に入って生産が定着し、雪深い村にとっては大切な換金作物として栽培されました。
明治二十八年にこの仕事にたずさわってきた夫婦がからむしの栽培と加工を伝授するためにロシアへ招かれたほどで、その技術がいかに高く評価されていたかが伺えるエピソードです。
第一次大戦後の工業の近代化による養蚕の隆盛や第二次大戦の戦中・戦後の食糧難による転作などで栽培は減少の一途をたどることになりましたが、伝統を守り抜きたいという気持ちから、昭和四十六年に農協で「からむし生産部会」を設け、からむしの織物としての良さを各方面に広く知らせていくことで注目をあびるようになりました。
平成に入ってからはその地道な活動と、伝承技術が評価され、織り、生産のいずれもが県の重要無形文化財指定と選定保存技術に認定されました。
平成三年、昭和村からむし生産技術保存協会が保持団体として、「からむし生産・苧引き」が国の選定保存技術に認定され、『からむし織の里』として全国に知れ渡るようになったのです。