昭和村勢要覧 -003/024page
「からむし織」一度身につけたら忘れられない快適さ
「からむし織」は苧麻と呼ばれる植物の茎を加工することでうみだされる繊維を織物にしたものです。原始織物ともいわれるほどその歴史は古く、奈良時代にもさかのぼるといわれています。苧麻が麻の分類に入るのは字を見てもわかるとおり、その繊維としての品質は、化学繊維では決して模倣できない特性をもっているのです。
吸湿性に富み、しなやかな肌ざわりでまといつくこの繊維は、高温多湿な夏にぴったりの素材です。
この栽培から加工までの一連の工程は、すべて手作業にたのむしかなく、一反を仕上げるのに数ヶ月を要することからも、からむし織を貴重で大変高価なものにしている要因ですが、一度身につけたら忘れることのできない快適さをもたらしてくれる織物なのです。
家々に響くからむしを織る音は、平成八年に「日本音風景一〇〇選」にも選ばれ、昭和村を代表する伝統産業となっています。
◎からむし織の里フェア
村の特産品であるからむし織を、多くの人々に広く知ってもらおうとはじめたイベントで、からむし織の見学や体験ができます。
からむし織が出来るまで
雪深い昭和村が遅い春を迎え、芽 吹きで山々が青く色づいた五月下旬、 からむし畑は焼畑でその一年が始 まります。
畑を焼いて肥料をまき、からむし は芽を出しますが、繊維の質を落と さないために、化学肥料はいっさい 用いられません。
夏の盛りまでにからむしはグン グンと成長し、人の背丈を越える七 月下旬こるから手作業による刈り 取りが行われます。刈り取られたか らむしは清水に浸けられ苧引きと いう作業で繊維を残し、これを乾燥 させます。乾燥したからむしを指で 裂いて一本づつ糸に紡いでいくの が苧績みと呼ばれる作業。根気を要 する作業で、反物一反分を紡ぐのに 50日はかかるのです。
こうしてできた糸は織り上げられ、 染められてようやく一反が完成す るのですが、この加工作業は村の女 性の手によって受け継がれてきた のです。